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お年寄りの病気:感染症・免疫・膠原病

敗血症

はいけつしょう、Sepsis

高崎 優

 体内局所の化膿巣(かのうそう)から間欠的(かんけつてき)または持続的に大量の細菌が血液中に流入して、全身の諸臓器に転移性の感染病巣を形成するもので、細菌感染症のなかで最も重篤な病態です。多発性の感染により全身に過度の炎症反応が起こる、全身性炎症反応症候群(SIRS)が本症の主要症状です(コラム)。

 原因菌は感染巣の部位により異なっていますが、臨床的には同じような経過をたどります。高齢者では、菌の侵入は、尿路感染症に由来するものが約30%と最も高頻度で、そのほか、中心静脈栄養(IVH)のための静脈内留置カテーテル、胆道感染症、呼吸器感染症、褥瘡(じょくそう)感染症などに由来するものが多くみられます。

症状の現れ方と診断

 全身症状としては前述のSIRSによる、悪寒戦慄(おかんせんりつ)を伴う高熱、頻(ひん)呼吸、血圧低下などがみられます。高齢者では意識障害や食欲不振などが前面に出ることもしばしばあります。

 診断は、原病巣および転移巣の証明、血液培養による菌検出、さらに血液検査では、白血球数、血小板数の急激な増加または減少、CRP高値、赤血球沈降速度(赤沈)の亢進、γ(ガンマ)‐グロブリンの増加などから行います。

治療の方法

 発症初期より、原因菌に対して殺菌力のある抗生剤の経静脈投与が治療の基本となります。全身管理として適切な輸液を行って電解質異常を改善し、また、ビタミン剤、強心薬、肝庇護薬などを適宜投与します。

 ショック、播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)症候群(DIC)の合併例では、早期から輸液、昇圧薬、抗凝固薬のヘパリン製剤、アンチトロンビンⅢ製剤(アンスロビンP)や蛋白分解酵素阻害薬のメシル酸ガベキサート(エフオーワイ)などの単独または併用投与をします。

 また感染巣の外科的処置として、膿瘍(のうよう)形成があれば切開排膿やドレナージ(排液)を行います。

経過と予後

 基礎疾患の重篤度、原因菌、栄養状態、合併症の有無などが予後に大きく影響します。高齢者では一般に予後は不良で、とくにDICやショックを合併すると致命率が高くなります。

用語解説

 カタル性炎症

 粘膜の炎症で、粘膜血管の充血、間質組織の浮腫、分泌上皮細胞の腫大を伴い、表面上に粘液の異常な層が形成される病態をいいます。

 嚥下性(えんげせい)肺炎

 食物の嚥下が障害されている時、誤飲や誤嚥(ごえん)、胃液の逆流などによって二次的に起こる肺炎で、高齢者や手術後の患者さんなどで起こりやすくなります。

 播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)症候群(DIC)

 基礎疾患によるさまざまな病態、外傷、手術、抗腫瘍薬(こうしゅようやく)投与などに併発する症候群です。全身の細小血管内に血栓が形成され、その結果、凝固因子や血小板の消費性減少と、線溶反応の活性化が起こり、各種臓器の虚血性機能不全とともに、出血傾向が現れます。原疾患の治療とともに抗凝固薬、抗線溶薬(こうせんようやく)、血栓溶解薬などが投与されます。

 予後は原疾患により異なりますが、早期からの積極的な治療により救命できることもあります。

 Torr(トール)

 圧の単位で、大気圧の760分の1。㎜Hgと同じです。

 耐性菌(たいせいきん)感染症

 抗菌薬に対して感受性の低い菌(薬が効かない菌)による感染症のことで、化学療法薬の使用量と普及に密接な関係があります。耐性菌は主に突然変異により出現し、ほかの菌に耐性を伝達します。耐性菌の出現は菌種および薬剤により異なります。出現の高い菌は、赤痢菌(せきりきん)、ブドウ球菌、結核菌(けっかくきん)、大腸菌などです。

 菌交代症

 ある病原体による感染症の治療経過中に、別の病原体による感染症に変わることです。感染病巣は同じことも異なることもあります。交代菌の由来は環境または常在菌叢(じょうざいきんそう)ですが、投薬されている薬剤に耐性をもつ病原体であることが多く、主な菌はカンジダ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、緑膿菌(りょくのうきん)などです。

 全身性炎症反応症候群(SIRS)

 さまざまの重篤な臨床的侵襲に対する全身性の炎症反応。リンパ球やマクロファージから一時に大量のサイトカインが産生され(高サイトカイン血症)、全身の細胞に強力な作用を及ぼし、重症の急性炎症反応が起きます。この炎症反応は細胞の死をまねき、急性臓器障害の原因になります。主な症状は、①38℃以上または36℃以下の体温、②心拍数90/分以上、③呼吸数20/分以上または動脈血炭酸ガス分圧(P aCO2)32㎜Hg以下、④白血球数1万2000/μl以上または4000/μl以下。

高崎優

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