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お年寄りの病気:感染症・免疫・膠原病

尿路感染症

にょうろかんせんしょう、Urinary tract infection

高崎 優

 尿路感染症とは、腎臓、腎盂(じんう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道、前立腺(ぜんりつせん)、精巣(せいそう)、副精巣(ふくせいそう)などの尿路の非特異的感染を総称した名称です。高齢者では、加齢に伴う膀胱の排尿機能の低下による残尿の増加と感染防御機構の減弱が根底にあり、そこにさらに、表15のような尿路の異常が合併すると、外尿道口から細菌が逆行して尿路管腔内へ侵入し、容易に感染を引き起こすようになります。

 このため、単一の細菌による感染は少なく、大部分は複数菌による「慢性複雑性尿路感染症(まんせいふくざつせいにょうろかんせんしょう)」として発症しています。細菌としては、大腸菌をはじめプロテウス菌、そのほかのグラム陰性桿菌(かんきん)が多く認められています。前述のとおり、高齢者は免疫能が低下しており、ほとんどは難治性で慢性に経過します。また、しばしば致命率の高い敗血症(はいけつしょう)へ移行する点が重要です。

検査と診断

 ①細菌尿、膿尿(のうにょう)

 尿沈渣(ちんさ)の所見で、白血球増多が認められた場合、本感染症を疑います。また、中間尿の細菌培養をして、尿lmlあたり105個以上の細菌コロニーが観察されれば、確定診断となります。同時に、細菌の同定と薬剤感受性試験を行います。

 ②細胞診

 血尿が認められた場合は、慢性に経過する感染症の背景に炎症、結石以外に悪性腫瘍性(あくせいしゅようせい)疾患がないかを診る目的で悪性細胞の有無を調べます。

 ③超音波検査

 腎臓、膀胱の腫瘤性(しゅりゅうせい)病変、水腎症(すいじんしょう)、結石、残尿の有無などを調べます。異常があれば、以下の検査に進みます。

 ④X線、CT、静脈性尿路造影、膀胱鏡検査など

 これらの検査は、泌尿器科の専門医に依頼します。

予防の方法

 まず尿路の異常を引き起こしている原因が治療可能な場合は、その治療を優先します。

 尿道の留置カテーテルが必要な場合は、留置期間をできる限り短くし、閉鎖式の管理を行います。おむつは極力避けることが賢明です。外陰部や外尿道口は常に清潔に保っておくことが大切です。残尿がある場合は尿道カテーテルによる間欠性導尿(かんけつせいどうにょう)を行います。導尿操作は十分な消毒を行って、人為的な新たな感染を起こさないよう注意します。

 尿失禁のある場合は一定時間毎に自己排尿を促すよう誘導を行います。寝たきりの場合、褥瘡(じゅくそう)予防のための体位変換とともに、上体を起こして腎から膀胱への尿流が良好に保てるように心がけ、自立排尿ができるように採尿器の設置やトイレヘの居住環境を整えることも大切です。

 以上によって、尿の停滞を可能な限り回避しておくことが肝要です。

治療の方法

 抗生剤は、発熱、腎部疼痛などの症状のない場合は使用すべきでなく、長期間続けることは、メチシリン耐性(たいせい)黄色ブドウ球菌(MRSA)や緑膿菌(りょくのうきん)などの耐性菌感染症(コラム)や真菌(しんきん)などへの菌交代症(コラム)をまねくおそれがあるので注意が必要です。細菌尿、膿尿が認められても症状がなければ、抗生剤の投与を行わないことが原則になっています。月1回程度の尿検査と尿の細菌学的検査を行って経過観察し、急性増悪時に備えておくことが重要です。

 無症候性であっても、65歳以上の高齢者の約30%に細菌尿が認められ、一度感染症が成立すると完全治癒は一般に困難とされています、感染症自体の増悪(ぞうあく)による腎機能低下の予防管理と敗血症への移行の防止が最も重要です。

表15 高齢者の易感染要因
用語解説

 カタル性炎症

 粘膜の炎症で、粘膜血管の充血、間質組織の浮腫、分泌上皮細胞の腫大を伴い、表面上に粘液の異常な層が形成される病態をいいます。

 嚥下性(えんげせい)肺炎

 食物の嚥下が障害されている時、誤飲や誤嚥(ごえん)、胃液の逆流などによって二次的に起こる肺炎で、高齢者や手術後の患者さんなどで起こりやすくなります。

 播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)症候群(DIC)

 基礎疾患によるさまざまな病態、外傷、手術、抗腫瘍薬(こうしゅようやく)投与などに併発する症候群です。全身の細小血管内に血栓が形成され、その結果、凝固因子や血小板の消費性減少と、線溶反応の活性化が起こり、各種臓器の虚血性機能不全とともに、出血傾向が現れます。原疾患の治療とともに抗凝固薬、抗線溶薬(こうせんようやく)、血栓溶解薬などが投与されます。

 予後は原疾患により異なりますが、早期からの積極的な治療により救命できることもあります。

 Torr(トール)

 圧の単位で、大気圧の760分の1。㎜Hgと同じです。

 耐性菌(たいせいきん)感染症

 抗菌薬に対して感受性の低い菌(薬が効かない菌)による感染症のことで、化学療法薬の使用量と普及に密接な関係があります。耐性菌は主に突然変異により出現し、ほかの菌に耐性を伝達します。耐性菌の出現は菌種および薬剤により異なります。出現の高い菌は、赤痢菌(せきりきん)、ブドウ球菌、結核菌(けっかくきん)、大腸菌などです。

 菌交代症

 ある病原体による感染症の治療経過中に、別の病原体による感染症に変わることです。感染病巣は同じことも異なることもあります。交代菌の由来は環境または常在菌叢(じょうざいきんそう)ですが、投薬されている薬剤に耐性をもつ病原体であることが多く、主な菌はカンジダ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、緑膿菌(りょくのうきん)などです。

 全身性炎症反応症候群(SIRS)

 さまざまの重篤な臨床的侵襲に対する全身性の炎症反応。リンパ球やマクロファージから一時に大量のサイトカインが産生され(高サイトカイン血症)、全身の細胞に強力な作用を及ぼし、重症の急性炎症反応が起きます。この炎症反応は細胞の死をまねき、急性臓器障害の原因になります。主な症状は、①38℃以上または36℃以下の体温、②心拍数90/分以上、③呼吸数20/分以上または動脈血炭酸ガス分圧(P aCO2)32㎜Hg以下、④白血球数1万2000/μl以上または4000/μl以下。

高崎優

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