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お年寄りの病気:血液疾患

多発性骨髄腫

たはつせいこつずいしゅ、Multiple myeloma

安川 正貴

病気のあらまし

 多発性骨髄腫は、骨髄中の形質細胞というリンパ球が腫瘍化した病気で、単に骨髄腫ということもあります。

 腫瘍化した形質細胞を骨髄腫細胞と呼びます。形質細胞は抗体(免疫グロブリン)を産生する細胞ですが、多発性骨髄腫になると異常な抗体(M蛋白)が産生され、正常な抗体はむしろ低下するために免疫力は低下します。おもに50歳以上の中高齢者に発症する病気です。

症状と診断

 多発性骨髄腫の症状は、骨の痛み、病的骨折・圧迫骨折、倦怠感(けんたいかん)、貧血、出血傾向、感染症に対する抵抗力の低下などです(表14)。このうち、最も一般的な症状は、背中や腰の痛み、貧血による倦怠感です。しかし、初期には症状が乏しく、定期健診で偶然に診断されることもあります。

 骨の痛みと貧血がある時には、多発性骨髄腫の可能性を常に念頭におくことが重要です。背中や腰の痛みを訴えることが多いため、はじめに整形外科を受診することがしばしばですが、診断と治療はおもに血液疾患専門内科医が行います。

 多発性骨髄腫が疑われる時には、血液検査(貧血や異常免疫グロブリンの有無、腎機能、カルシウム値など)、尿検査(尿に排出される異常蛋白の有無)、X線検査(骨の異常や骨折の有無)のほかに、骨髄中の骨髄腫細胞の増殖を調べる目的で骨髄穿刺(せんし)を行います。

治療とケアのポイント

 一般に、多発性骨髄腫は緩やかに進行する病気で、進行程度によって病期を3つに分類します。

 Ⅰ期は、骨髄腫細胞やM蛋白が認められるものの軽度であり、貧血や骨の病変が認められない場合です。通常、治療は行わず、定期的な血液検査で経過を観察します。

 Ⅱ期、Ⅲ期は、M蛋白値が高値で、貧血、骨病変、血中カルシウム高値などが認められる場合です。多発性骨髄腫においては、早期治療開始が必ずしも長期的な予後改善に結びつかないことがわかっており、通常Ⅱ期、Ⅲ期から治療が行われます。

 ●治療

 主な治療法には、化学療法(抗がん薬による治療)と放射線療法があります。

 多発性骨髄腫は化学療法(薬物療法)で効果が現れる疾患ですが、残念ながら確実に治癒を期待できる治療法は確立されていません。

 放射線療法は、骨髄腫細胞が腫瘤(しゅりゅう)を形成した場合や疼痛緩和の目的で行われるので、照射部位は局所的です。60~65歳以下の比較的若い患者さんには、大量化学療法後に造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)を行うことがありますが、高齢者に対してはこのような強力な化学療法は行えません。

 高齢者の骨髄腫に対する一般的な化学療法は、メルファランとプレドニゾロンを4日間定期的に投与するMP療法ですが、もう少し強力なVAD療法という治療を行う場合もあります。また、デキサメタゾンというステロイド薬を大量に投与する治療法もあります。

 最近は、治療抵抗性の場合に、ボルテゾミブ(ベルケイド)やサリドマイドなどの分子標的薬も使用されるようになりました。また、骨病変の改善にはビスホスフォネートという薬剤が用いられます。

 ●ケア

 症状が安定していれば、日常生活に特別の制約はありません。むしろ、過度の安静は骨病変の進行につながるので、高度の骨病変がないかぎり、適度な運動を取り入れた生活を送ることが必要です。

 ただし、打撲・転倒などによる骨折にはくれぐれも注意を払う必要があります。また、中腰の姿勢を伴う作業や急に姿勢を変換することなどは、圧迫骨折や病的骨折の原因となるので極力避けることが望まれます。

 多発性骨髄腫では、正常免疫グロブリンの産生低下や化学療法の結果、しばしば免疫不全状態に陥ります。つまり、細菌やウイルスに対する抵抗力が低下するので、発熱、咳(せき)、痰などがある場合には、できるだけ早く主治医の診察を受け、適切な治療を行うことが大切です。

 また、腎障害は予後を左右する危険な合併症です。脱水状態は腎障害を悪化させるので、何らかの理由で水分制限をする必要がある場合以外には、普段から水分を十分に摂取するように心がけることも大切です。

表14 多発性骨髄腫の症状

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