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データで見る栄養学

データが示す「食べていないのに太る」は記憶のウソ

人は食べたものの1~2割を忘れている

 村山真由美=フリーエディタ―・ライター

佐々木:図1から計算すると、7%から19%となります。人は食べたものを1~2割くらい忘れてしまっていて、太めの人ではさらに甚だしいということになります。

「多めに食べて忘れる」が人間の基本設定

編集部:なぜ、私たちはこんなにも食べたものを忘れてしまうのでしょうか?

佐々木:それは、食べるということは人間の根源に関わることだからです。私たちは生きていくために、目の前に食べ物があったら自然に口に入れるようにできています。「意図せずに」食べるようになっているのです。

編集部:それはなぜですか?

佐々木:人間が進化する途中で、エネルギーをとり過ぎて困るという現象はほとんどありませんでした。人間の頭脳は飢餓に対する注意信号は出しますが、食べ過ぎに対する注意信号を出す必要はなかったのです。多めに食べて、食べたことを忘れるほうが生き残れます。

編集部:なるほど。人間は「多めに食べて忘れる」というのが基本設定なのですね。では、やせたい人はどうすればいいとお考えですか?

間食するときも、目の前の選択肢の中からエネルギー量の少ないほうを選ぶといい(c)Arnel Manalang-123rf

佐々木:1食に何キロカロリー食べたらいいかを考えるのではなく、目の前の選択肢の中から、常にエネルギー量が少ないほうを選んで食べることです。例えば、ケーキAは300キロカロリー、ケーキBは200キロカロリーだったら、ケーキBを選ぶということ。

編集部:食べたものを全部把握することはできなくても、食べるときに選ぶことならできそうです。

佐々木:さらにお勧めなのは、見た目が大きくてエネルギー量が少ないものを選ぶことです。例えば、野菜がたくさん入っているもの。野菜は低エネルギーでカサが増えますから、腹持ちがよくなり、間食を防ぐことができます。「見た目が大きいものを食べると食べた気になる」という研究もあります。また、どんぶりやワンプレートディッシュよりも、小皿や小鉢をたくさん使った料理のほうがお勧めです。茶碗にご飯を盛るときは、ギュッと詰め込まず、ふわっとさせて大きく見せるといいでしょう。

編集部:どれくらい続ければやせますか?

佐々木:肥満の人が減量のために行動を改善する研究によると、だいたい4カ月くらい必要です。

編集部:体重を測定することは重要ですか?

佐々木:重要です。食べる量が適切であったかどうかは体重に反映されますから、体重は毎日量りましょう。1カ月に1kgくらい減るのが理想的です。

食べることを好きになろう

編集部:先ほど、太っている人ほど食べたものを少なく考えがち、というお話が出ましたが、それはどうしてですか?

佐々木:自分が何を食べているのかを気にしていない可能性があります。早食いだったり、スマートフォンを操作しながらの食事だったり、パワーランチ(昼食をとりながらの会議)だったり。これらは食事に集中していませんよね。

編集部:食べることに興味がない人も、自分が何を食べているのかをあまり気にしませんね。

佐々木:この料理には何が入っているのかな? この味は何かな? と考えていたら早食いはできません。「そんなに食べていないのに太る」と感じている人は、ゆっくり味わって食べてみてはいかがでしょうか。食べることに集中したり、食べることを好きになるといいと思います。

編集部:料理をするのもよさそうですね。

佐々木:そうですね。我々は、食べたものを1~2割忘れる生き物だということを踏まえて、食事を見直してみてはいかがでしょうか。

データで見る栄養学

第2回 「糖質制限」は他のダイエット法よりやせるのか?

第3回 「早食い」は太る! 忙しい人でも無理なく実践できる「太りにくい食べ方」とは?

第4回 「理想的なBMIは22」は本当なのか?

佐々木敏(ささき さとし)さん
東京大学大学院医学系研究科 社会予防疫学分野教授・医学博士
佐々木敏(ささき さとし)さん 1994年、大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了、ルーベン大学大学院医学研究科博士課程修了(ベルギー)。2007年より現職。早くからEBN(evidence-based-nutrition:根拠に基づく栄養学)に注目し、日本初の食事摂取基準の策定に貢献。日本の栄養疫学研究の中心的存在。近著は『佐々木敏の栄養データはこう読む! 疫学研究から読み解くぶれない食べ方』(女子栄養大学出版部)。

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