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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋肉を太くするカギを握る「インスリン様成長因子」とは

第58回 トレーニングの容量を高める(2)

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

インスリン様成長因子(IGF-1)が筋肥大を直接的に促進する

 ホルモンは基本的に全身的なファクターです。成長ホルモンは脳下垂体から、男性ホルモンは精巣から分泌され、全身を巡りながら筋肉に作用するわけです。もし筋肥大におけるホルモンの影響力が強いとすると、片腕のトレー二ングを行うことで、反対側の腕も強くならなければいけません。腕のトレーニングをしたら、脚も太くならなければおかしい、ということになります。しかし、そういうことは起こらないので、やはりホルモンの影響よりも、筋肉を動かすという局所的な仕組みのほうが重要であるということになります。

 そこで注目されているのが、成長ホルモンに似た「インスリン様成長因子」(IGF-1)という物質です。これは肝臓から分泌されますが、トレーニングをすると筋肉からも分泌され、筋肉自身に働きかけたり、筋サテライト細胞(筋線維の再生のために必要な細胞)という幹細胞の増殖を促したりと、局所的に働いて筋肥大に貢献することがわかっています。

 では、筋肉にIGF-1を効果的に分泌させる刺激はどういうものかというと、瞬間的に大きな力を出すタイプのトレーニングではありません。少し長い時間、筋線維が頑張って力を出すということが重要になります。それはやはりトレーニングの容量を増やすということです。

 メカニズムは完全に解明されていませんが、容量の大きなトレーニングを行うと、一過的に成長ホルモンも強く分泌されます。ですから、成長ホルモンのよく出るトレーニングが、筋肉にIGF-1を作らせることと同様の刺激である可能性は高いと思います。成長ホルモンと筋肥大との間に直接的な因果関係があるわけではないので、成長ホルモンを分泌させることが目的になってしまうのは間違った考えですが、成長ホルモンの増加を、質の高いトレーニングができたという目安として捉えることは間違いではないと思います。

 また、最近の研究では、男性ホルモンはIGF-1のように筋肉からも分泌されることがわかっています。そのような筋肉由来の男性ホルモンは、精巣から分泌される循環型の男性ホルモンよりも、筋肥大効果が高いということになります。

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