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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

スポーツ動作の質と力に関わる、筋肉の「動的特性」

第12回 貝、昆虫、カエル、ヒト…動物種の筋肉はすべて同じだった

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。今回は、スポーツ動作の質と力に関わる、筋肉の「動的特性」について。筋肉が発揮する「速度」と「力」との関係は“双曲線状”になることが、「あらゆる筋肉に共通した特性」だと石井先生は解説します。

スポーツ動作では力よりスピードが重要

 前回までは筋肉の「静的特性」について解説しました。これは力発揮の仕組みを理解するため、またデータを集めるためには便利な指標なので、研究の分野ではよく利用されてきました。

 しかし、実際の運動においては、静止したまま大きな力を発揮するという場面はあまりありません。スポーツ動作の質や強さを考える場合、どれだけ力を発揮できるかというよりも、どれだけスピードを出せるかということのほうがはるかに大きな問題となります。そこで、筋肉が収縮しているときにどういう特性を発揮するか、つまり「動的特性」が重要になってくるわけです。

スポーツ動作の質や強さを考える場合、どれだけ力を発揮できるかというよりも、どれだけスピードを出せるかということのほうがはるかに大きな問題となる。(©Pavel Shchegolev-123rf)
[画像のクリックで拡大表示]

 まずは、筋肉の代わりに人工のモーターを考えてみましょう。模型の自動車を走らせるとき、あるいはファンを回すための動力が欲しいときなど、それぞれの用途に合った動的特性をもつモーターを選ばなければなりません。モーターの動的特性とは、回転力(トルク)と回転速度との関係。わかりやすくいうと、「力」と「速度」との関係です。これはモーターのカタログには必ずグラフとして示されています。

 モーターにはさまざまなタイプがあり、力は強くても速度が出ないものもあれば、速く回るけれども力は弱いというものもあります。一般的な直流モーターを購入する場合、こちらの求めている力がそのモーターの最大出力の半分程度、あるいは求めているスピードがそのモーターの最大スピードの半分程度、という特性が満たされていると、一番いい選択といえるでしょう。

図1 直流モーターのトルク−回転速度関係の模式図
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 モーターの力‐速度関係を調べるのは簡単で、モーターに電源をつないで回せばいい。その上で回転軸に対して抵抗をかけていったときに、回転速度がどう変わるかを見ていきます。直流モーターの場合、抵抗が増える(回転するときの力が増える)と、徐々に速度が落ちていき、やがて止まってしまいます。この止まったところが最大トルクということになります。これは筋力でいうと、等尺性最大筋力に相当します。

 一方、モーターが最も速く回るのは何も負荷がかかっていないとき(無負荷最大速度)。典型的な直流モーターは、図1のように力の増大とともに直線的に速度が低下していきます。このグラフの真ん中くらいの数値のモーターを探すのが上手な選び方です。

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