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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

ヒトの筋肉のエネルギー効率は原動機レベル

第31回 筋肉のエネルギー消費量の6~7割は熱になってしまう

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

熱を作り出す褐色脂肪

 ここで見方を変えてみると、筋肉を働かせるということは、力を出したり運動をしたりするだけが目的ではないといえます。熱を出すということも筋肉の重要な役割なのです。特に哺乳類が生きるためには熱を出し続ける必要があるため、もともとそういう働きが筋肉に備わっているのでしょう。

 その働きがどのような現象として起こっているかというと、例えば「震え」(シバリング)があります。寒いところに行くと身体が勝手にブルブルと震えるのは、筋肉の収縮に伴って生産される熱を利用して体温を維持しようとしているわけです。これを「震え熱産生」といいます。それに対して、「非震え熱産生」と呼ばれる現象もあります。体内には、震えるような運動をしなくても熱を作る仕組みがあります。

 非震え熱産生の熱源としては、まず「褐色脂肪組織」が重要な役割を担っています。これは熱を作ることが専門の脂肪組織で、脂肪をエネルギー源として燃やすことで熱を産生しています。ほとんどの細胞中には、エネルギーを生産するミトコンドリアという小器官が存在しています。褐色脂肪細胞には、このミトコンドリアが多く含まれています。ミトコンドリアは赤っぽい色をしているため、褐色脂肪も全体として褐色に見えます。一方、普通の脂肪細胞はミトコンドリアが少なく白っぽく見えるために、白色脂肪と呼ばれます。

 褐色脂肪は、クマやリスのような冬眠をする動物に多く見られます。これらの動物は秋の間に身体がめいっぱい脂肪を蓄え、その脂肪を少しずつ使いながら体温を維持して寒い冬を乗り越えます。そのときに活躍しているのが褐色脂肪だと考えられます。

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