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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

ヒトの筋肉のエネルギー効率は原動機レベル

第31回 筋肉のエネルギー消費量の6~7割は熱になってしまう

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。今回からは、筋肉と熱をテーマに話をしていきます。寒いときに身体が震えると温かくなるように、筋肉が動くと熱が生じることは多くの人がご存じでしょう。では、筋肉のエネルギー消費量のうち、どのくらいが熱になるのでしょうか。

筋肉のエネルギー消費量のうち半分以上が熱になる

 今回からは、筋肉の力学的な特性から少し離れて、「熱」をテーマに話を進めていきたいと思います。筋肉が収縮すると、力学的なエネルギーだけでなく熱も出る、そして負荷が軽くなってスピードが上がるほどたくさんの熱が出るということは、第17回で説明しましたね。

 では、全体のエネルギー消費量のうち、何割が力学的エネルギーになり、何割が熱になるのでしょうか。

寒いところに行くと身体がブルブルと震える。これは、筋肉の収縮に伴って生産される熱を利用して体温を維持しようとしているため。これを「震え熱産生」という(©linux87-123rf)
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 等尺性収縮(アイソメトリック)をしているときは力学的なパワーはゼロなので、筋肉は熱しか出していないということになりますが、熱の産生も最も少なくなっています。これを「維持熱」といいます。

 収縮する速度が速くなるとともに力学的なパワーも熱も増えていき、力学的なパワーは等尺性最大筋力の30~35%ほどでピークになります。一方、熱はそこからさらに上がっていき、軽ければ軽いほど熱の発生が増えていきます。

 全体のエネルギー生産に占める力学的なパワーの割合が一番大きなところは、「筋肉のエネルギー効率がいい」といえます。自動車でいうと一番燃費がいい状態。それについては、1938年からカエルやカメなどの筋肉でさまざまな研究結果が報告されています。

 カエルの筋肉のエネルギー効率は、等尺性収縮の約50%(収縮速度でいうと、最大速度の20%ほどのところ)で最大になります。カメの場合はもう少し効率がよく、60%前後という結果が出ています。カメの筋肉はカエルの筋肉より収縮速度が遅いのですが、遅い筋肉のほうがミオシン分子が力を発揮する時間が長いため、エネルギー効率はよくなると考えられます。

 ヒトの場合は、倫理上、生きた筋肉を取り出して実験することはできないので、現在の技術で正確な効率を出すことはできません。そこで同じ哺乳類であるネズミで実験が行われ、そのデータがここ数年で集まってきたというのが現状です。それによると、速筋線維の多い長趾伸筋で調べると30%前後、遅筋線維の多いヒラメ筋で見ると40~50%。哺乳類の筋肉は、両生類などと比べるとスピードが速い筋肉である分、エネルギー効率が少し悪くなるようです。

 最も効率がよくて30%もしくは40%ということは、筋肉を働かせると残念ながら60~70%は熱になってしまうということになります。人工の原動機のエネルギー効率も30~40%なので、機械とほぼ同じくらいということですね。

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