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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋肉は1方向にしか縮まない!?  「筋収縮」の仕組み

第5回 一流アスリートの太もも裏側が発達しているワケ

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。今回は、筋肉の収縮について。意外に思われるかもしれませんが、運動によって必要な力は、筋(筋肉)が縮むときだけに生まれるわけではありません。「筋収縮」の定義とメカニズムについてご紹介します。

筋肉は「伸びながら」でも「縮みながら」でも力を出せる

 最初に「筋収縮」という単語について、少し説明しておく必要があります。「収縮」という言葉の本来の意味は物理的に小さく短くなることなので、一時期、「伸張性収縮(エキセントリック)で収縮という単語を使うのはおかしい」という議論がありました。伸張性収縮とは、筋肉がブレーキとしての力を発揮しながら引き伸ばされている状態のこと。バーベルをゆっくり下ろしているときなどがそうです。このとき、筋肉そのものは収縮しているのではなく、伸張しています。それなのに収縮という単語を使うのはおかしいのではないか、というわけです。

 その議論は、筋収縮という言葉の使用はやめて、「筋活動」にしようという話に発展しました。ですから今でも、運動生理学の分野で筋収縮というと筋肉が短くなることを指す場合が多く、筋肉が力を出している状態を筋活動と総称するケースが少なくありません。

筋収縮は必ずしも外観上の収縮を伴うものばかりではない。(©leonello calvetti-123rf)
[画像のクリックで拡大表示]

 ただ、筋活動といってしまうと、筋肉の力学的な仕事以外に、熱を出すことなども含まれてしまうので、用語としてはかえってわかりにくくなるという反対意見もありました。私も反対派です。ともあれ、筋収縮という言葉にはそういう歴史的経緯がありました。

 私たちが筋収縮といった場合、必ずしも外観上の収縮を伴う必要はありません。では、筋収縮の定義とは何か? それは「筋肉が筋肉自体の中心方向に向かって能動的に力を発揮すること」です。

 力が中央に向かって生じていればいいわけですから、伸張性収縮はもちろん、筋肉の両端が固定された状態(等尺性収縮=アイソメトリック)で筋肉自体の長さが変わらなくても、筋肉が力を発揮していれば筋収縮ということになります(握力や背筋力を測るときには、力は発揮していても動作は止まっています。これが等尺性収縮です)。

 このことを認識しておかないと、次からの説明がわかりにくいと思うので、しっかり頭に入れておいてください。


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