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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋トレ“初心者”ほど記録がどんどん伸びる2つの理由

第44回 トレーニング効果の表れ方(前編)

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

 ベンチプレスやスクワットといった種目は、いくつもの筋肉を協調的に使って行う複合関節動作で、しかも最終的に発揮される筋力が非常に大きくなるので、実験が難しくなります。したがって、神経系の要因によってどのような変化が起こるかということは、現状では調べられていません。

 恐らく、多くの筋肉を使いながら最終的に大きな力を発揮するようなタイプの種目や動作形態ほど、中枢神経系によるブレーキ効果は大きくなるのではないかと予想できます。なぜなら、大きな力を出すほうが身体にとって危険度が高くなるからです。また、大きな力を出すということは、身体の中のいろいろな筋肉や関節を使うことになり、そのうちの弱いところに極端なストレスがかかることにもなります。そうした状態を避けるために、ブレーキがかかりやすくなるのではないかと推測されるのです。

トレーニング初期は学習効果による影響も大きい

 また、ベンチプレスやスクワットのような複合関節動作は、動作としての難易度が高くなります。絶対的な難しさではありませんが、単純に肘を屈曲させるアームカールなどと比べると、複雑で難しい動作です。

 難しい動作ほど、「学習効果」による筋力の変動が大きくなります。つまり、経験を積むことでより効率よく筋肉を使い、より効率よくバーベルを上げることができるようになり、結果として1RMの数値も伸びてきます。

 同じ種目の1RMを測定した場合は、中枢の抑制が低減されたことと、学習効果によって動作が上手になったことの2つの効果が表れます。ですから、トレーニング初心者であるほど筋肉が太くなる以前に記録がどんどん伸びてくる。ベンチプレスやスクワットであれば、2~3週間で10kg以上も記録が伸びるということも起こります。ただ、それは筋肉の断面積が10%増したということでは決してないわけですね。

 トレーニングを開始して1カ月~1カ月半ほどたつと、学習効果が次第に上限に達し、神経系の抑制の低減も一段落してきます。そうなると、それ以上に筋力をアップさせるには筋肉を太くするしか手がなくなります。そのあたりから、だんだん筋肉が太くなるといわれてきました。

 筋電図を取りながら最大筋力を測ると、筋肉の中の運動単位がどのくらい活動しているかを推測することができます。一定の筋電図(筋活動量)あたりに発揮される筋力が大きくなったということは、筋肉が肥大したということになります。一方、筋力が増えた分、筋電図の電位変化が大きくなっている場合は、筋肉をより活動させられるようになったということ。つまり、筋肉のサイズが増えたのではなく、動員する運動単位の数が増えたという解釈になるわけです。

 こうした実験によって、トレーニング初期は動員できる運動単位の数が増えることによって筋力が上がる、という現象が証明されてきました。神経系の適応ののち、少しスランプがあって、やっと筋肉が少しずつ太くなってくるというのが教科書的にいわれてきたわけです。

 ところが、最近の研究では、一概にそうとはいえない状況になってきています。それについては次回解説しましょう。

トレーニング初心者ほど記録がどんどん伸びてくる。
ただ、それは筋肉の断面積が大幅に増したということではない。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

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この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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