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第10回 「医療訴訟を提起したい」という相談が激減した理由

電話相談から見たこの25年間の患者意識の変化

 山口育子=NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長

誰もがいつかはお世話になる「医療」。ですが、自分や家族が病気になるまで、医療については特に関心がないという人も多いのではないでしょうか。医師との付き合い方や医療制度の動向まで、いざという時にあわてず、安心して治療を受けるために必要な知識をNPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長の山口育子さんが伝授します。

 私たちCOMLが活動をスタートした1990年は、日本医師会の生命倫理懇談会がインフォームド・コンセントを「説明と同意」と訳し、「これからの医療現場に広めていく必要がある」と発表した年です。以来、25年間、COMLはまさしく、インフォームド・コンセントの発展と共に歩みを進めてきたように思います。

 1990年当時、患者はほとんど情報を得られず、「医療のような高度な専門領域は、医師にお任せするしかない」「説明を受けてもどうせ分からない」と、半ば諦めていました。しかし、その後の情報化やインターネットの普及といった時代の変化と共に、患者を取り巻く環境は大きく様変わりしました。

まず「聴く」ことから始まる電話相談

 COMLの日常の活動の柱は、全国の患者・家族から届く電話相談への対応です。これまでに約5万5000件に上る相談が寄せられました。

医療電話相談の内容も、この25年で大きく変わった(©Dan Kosmayer/123RF.com)

 相談を受ける上での私たちのこだわりは、専門家ではなく、同じ患者の立場のスタッフが対応すること。これは「相談とは答えることではなく聴くこと」という信念によるものです。忙しさが増すばかりの医療現場で、医療者が「時間をかけてじっくり患者と向き合う」ことは難しいのが現実です(そのことにジレンマを感じる医療者も少なくありません)し、入院治療から外来治療へとシフトする中で、患者が疑問を抱いたり不安になったりするのは自宅や仕事先で、周りに医療者がいません。つまり、患者がその想いを医療者に話す機会が限られているのです。

 そのようなときに、まずは想いをすべて吐き出してもらい、問題整理のお手伝いをした後で、その人が「どうしたいか」という本音を引き出し、それに沿ったアドバイスや情報提供をします。しかし、必ずしもアドバイスや情報提供ができるとは限りません。解決方法が簡単に見つからない場合でも、相談者の想いを受け止め、寄り添いながら“聴く”ことはできるはず、そう考えて対応してきました。そのため1件の相談に要する時間は長く、平均で約40分かかっています。

25年間の相談で変わったこと

 振り返れば、この25年間で、電話相談の内容も患者の意識も、さらには医療現場も大きく変化しました。特に1990年代の10年間は、患者の権利意識やコスト意識の芽生えと共に、情報化が進みました。それまで表沙汰にならなかった“暗闇の部分”も表面化するようになったあたりから、医療に不信感を抱く患者・家族も増え始めました。

 そこに1999年に起きた横浜市立大学医学部附属病院の患者取り違え事故や都立広尾病院での消毒液誤注入による患者死亡事故などの大きな医療事故が重なったことにより、医療事故・ミスの報道は過熱を極め、深刻な医療不信の深まりをもたらしました。

 そうした動きに伴い、COMLでも、「医療訴訟を提起したい」という内容の電話相談が増えました。ピーク時は、寄せられた電話の約2割強が、法的解決や示談交渉を含む医療不信関係の相談だったほどです。

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