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医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ

グルテンフリーダイエットって誰が必要なの?

健常な人の減量効果には疑問の声も

 大西睦子

食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
日本では数年ほど前から注目を集め始めた「グルテンフリーダイエット」。「低炭水化物ダイエット」に続き、人気を高めてきているようですが、科学的根拠については当初から疑問視されていました。実際には、何のために“グルテンフリー”が推奨されているのでしょうか?

はやりのグルテンフリーダイエットには科学的な証拠がない

グルテンは、小麦やライ麦、大麦などの穀物に含まれているタンパク質。(©Uwe Mayer/ 123RF)

 米国では2012年ごろから「グルテンフリーダイエット」と呼ばれるダイエットが大人気です。直訳すると「グルテン除去食」。著名人が「グルテンフリーダイエットで減量成功」などといった例が多数メディアで紹介され、大きな話題になっています(関連記事:【Washington, D.C.】米国で「GF食品」が人気のワケ)。

 ところがこのグルテンフリーダイエット、実は一般人(特定の病気などではない人)にとって健康上のメリットがあるかどうか、はっきりとした科学的な証拠は出ていません。それどころか、グルテンのメリットを失う可能性も指摘されています。

 米国アリゾナ州立大学(Arizona State University)のグレン・ガエッサー教授らは、グルテンフリーダイエットを一般大衆に勧めるのは、軽卒なことではないか? という疑問を投げかけています。今回はその報告を解説していきましょう。

■参考文献
Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics「Gluten-Free Diet: Imprudent Dietary Advice for the General Population?

グルテンって何?

 グルテンは、小麦やライ麦、大麦などの穀物に含まれているタンパク質です。

 詳しく解説すると、小麦粉などの穀物にはグリアジンとグルテニンという2種類のタンパク質が含まれていて、水を加えてよくこねると両たんぱく質が絡み合い、粘りや弾力性のあるグルテンになります。小麦粉はグルテンの量が多いものから順に、強力粉、中力粉、そして薄力粉と呼ばれます(英語でも同様にstrong flour、medium flour、weak flour)。粘りが強く出る強力粉は焼いたときによく膨らむのでパンやピザなどに、キメ細かくさっくり仕上がる薄力粉はクッキーやケーキ生地、天ぷらの衣などに最適です。

 そしてグルテンフリーダイエット、つまりグルテン除去食は、セリアック病やグルテン過敏症、小麦アレルギーなど、グルテンの摂取が原因とされる疾患の増加とともに注目されるようになりました。

グルテンフリーダイエットが必要な疾患その1:セリアック病とは?

 セリアック病は、グルテンによって引き起こされる自己免疫疾患です。

 自己免疫疾患は、免疫システムが誤作動して、身体が自分の組織を攻撃する病気です。本来免疫システムは、何かの物質(例えばウイルスやアレルゲンなど)が身体に入ってきたときに、異物あるいは危険な物質だと認識すると、身体を守るために発動し、物質を排除しようとします。ところが免疫システムが誤作動して自分の細胞や臓器に反応すると、それらを排除するための抗体を作り出して、特定の臓器や部位を攻撃するようになります。すると体内に障害や炎症が起き、全身性の症状が出ることもあるのです。

 セリアック病の場合、グルテン摂取後、小腸の粘膜に炎症が起こり、栄養の吸収が阻害されます。その結果、腹部膨満感、腹痛、下痢や便秘、栄養失調、鉄欠乏性貧血、疲労、骨粗しょう症など、さまざまな症状をきたします。有病率は欧米で約1%と言われ、遺伝的な要因が大きいとされています。

 しかし徹底したグルテンフリーダイエットにより、消化器がんなどの発生率が低くなると報告されており、セリアック病患者にとっては確立された治療法といえるのです。

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